この度、福岡県筑紫野市にある高級老舗旅館「二日市温泉・大丸別荘」が、本来週1回以上行う必要があるとされる大浴場のお湯の取り換えを、年に2回しか行っていなかったことが発覚しました。
さらに塩素の注入も怠っていたことも発覚し、その結果、基準値の約3700倍のレジオネラ菌が検出されたということです。
これは一体どれぐらい危険な事なのでしょうか?
事件の概要と大丸別荘について詳しく見ていきます。
2023/3/1追記
目次
県条例に違反していた「二日市温泉・大丸別荘」とは?
今回、県の条例に違反していた「二日市温泉・大丸別荘」とはどんな旅館なのでしょうか?
公式HPには以下の様な紹介がされています。
奈良時代より湧き続ける「温泉」
創業慶応元年(1865年)より受け継がれた「伝統」と「おもてなし」
現代の急速な時代の流れに合わせた「革新」
それらすべてが6500坪の広大な敷地に存在し、非日常の癒しへと導きます。
創業は1865年で、温泉自体は奈良時代から湧き出ているとのこと。
昭和天皇も宿泊したことがあるという、格式高い旅館です。
場所は福岡市の南東の筑紫野市にあり、福岡の中心地からも車で30分圏内です。

引用:Googleマップ
敷地も6500坪と広大で、客室や料理にもこだわりを感じます。
しかし結局、こだわっていたのは目に見える部分だけで、客からは一見分からないような部分は手を抜いていたということでしょうか?
今回の件、大丸別荘にとっては大きく評判を下げることになりそうです。
レジオネラ菌の危険性。他の旅館の対応は?
今回の件で、大丸別荘の浴槽からは基準値の最大3700倍のレジオネラ属菌が検出されたということです。
そう言われても、一般の方にはピンとこないと思います。
レジオネラ菌とは一体どんな菌なのか、どれぐらい危険なのかを詳しく見ていきます。
レジオネラ菌(正確にはレジオネラ属菌)は川や湖、土壌など、いたる所に生息する細菌です。
特に、消毒されていない水、入れ替わりの少ない水、水温20℃~50℃の水では増殖しやすいと言われています。
今回の大丸別荘の温泉は、塩素を入れず、お湯の交換をせず、40℃前後のお湯ということで、レジオネラ菌が増殖する環境をバッチリ揃えてしまっていると言えます。
感染ルートとしては、主にレジオネラ菌で汚染されたエアロゾル(霧やしぶき)を吸い込むことで感染します。
また、温泉のお湯などを直接飲んでしまっても感染する可能性があります。
感染した場合、「レジオネラ肺炎」など、重篤な病気になってしまう恐れがあります。
上の表は、近年のレジオネラ症の感染者数と死亡者数を一部抜粋したものです。
近年、増加傾向にあり、ここ数年は感染者数が2000人を超えています。
致死率はおおおそ3%~5%ぐらい。
毎年、50人以上も死者を出している危険な感染症ですね。
レジオネラ症は特に、温泉で感染する人の多い病気なので、温泉施設のあるホテルや旅館ではかなり慎重に対応しています。
私は以前ホテルで働いていた経験があるのですが、そのホテルでも一日2回塩素濃度のチェックを行っていました。
私の働いていたホテルではその塩素濃度チェックを「レジオネラ」と呼び、入った初日にチェックの仕方を覚えさせられます。
どんなに忙しい日でも1日2回の「レジオネラ」を欠かしたことはありませんでした。
それぐらい、危機感を持って業務に当たっていました。
自分のチェック忘れで、人が死ぬ可能性があるのなら当然です。
他のホテルでも恐らく同程度のチェックは怠らずやっていることでしょう。
福岡県の条例では、循環浴槽のお湯を全て取り換える「完全換水」を週1回以上行うことと、塩素濃度を1ℓあたり0.4㎎以上に保つように定められています。
しかし、大丸別荘は完全換水を年に2回しか行っていなかったとのこと。
今回の大丸別荘のやったことはかなり異常な事だと言わざるを得ません。
人が死ぬ、または後遺症が残るほど危険な菌が、基準値の3700倍になるまで放っておいたというのは、もはや殺人未遂といっても過言ではないです。
大丸別荘のお湯換え問題の概要。発覚の経緯は?
今回の件、一体どのように発覚したのでしょうか?
発覚の経緯と事件の概要を詳しく見ていきます。
発端となったのは、大丸別荘で2022年8月の検査において、レジオネラ菌が基準値の2倍検出されたことでした。
その際、大丸別荘は保健所に対し、完全換水を週1回実施していること、塩素注入も適正だったことを説明しています。
その際は、温泉の利用を一時的に休止し、洗浄を行い、8月中に再開しています。
しかし、同年11月に保険所が再検査した所、今度は基準値の最大3700倍にもなるレジオネラ菌を検出。
本来、お湯の取り換えは週1回以上行うことが義務付けられていますが、大丸別荘では休館日の年2回しか行っていなかったとのこと。
さらに塩素濃度も、基準値の1ℓあたり0.4㎎を下回っていることが発覚しました。
その後、保健所が大丸別荘の衛生管理体制を詳しく調べた結果、管理簿に記載されている数値が虚偽であることを大丸別荘側が認めました。
温泉の管理簿は3年間の保管義務があるので、少なくとも2019年以降、違反状態だったことが発覚しましたが、それ以前はどうなっていたかは分からないということです。
正直、ここ数年だけの話ではないような気がするので、もっと前から杜撰な管理体制だったのではないかと疑ってしまいますね。
福岡県は換水、塩素注入の違反に関して、2022年12月26日付で大丸別荘に改善を指導しました。
また虚偽の報告に関して、「2千円以下の罰金」を科せるか現在確認中とのこと。
この措置はちょっと甘すぎるんじゃないでしょうか?
はっきり分かっていないだけで、大丸別荘をかつて利用した人の中に、レジオネラ症になった人がいる可能性があります。
場合によっては死んでいる人がいるかもしれません。
そんな旅館に行ったのは「指導」だけです。
これは条例自体の見直しも検討しないといけないですね。
ちなみに大丸別荘は一時営業を休止しましたが、2022年の12月下旬には営業を再開しています。
そして、運営会社は取材に対し「当社の業務内容につきましては公表を控えさせていただいております」と回答。
説明責任も果たさず、のうのうと営業を続けていることに憤りを感じます。
今回、ニュースとして報道されたことによって、なんらかの制裁が下されることを期待します。
2023/3/1追記
多くの批判を受けてついに大丸別荘の社長が記者会見を開きました。
本来なら、発覚してすぐにでも記者会見を開くべきだったと思います。
大丸別荘に対する世間の声は?利用客の声も
今回の件で、大丸別荘に対する世間の声は一体どういったものがあるのでしょうか?
一部ピックアップしてみました。
とんでもない旅館だな。うちの近くに日帰り温泉があって料金もリーズナブルで評判がよかった。
後にレジオネラ菌で利用客が亡くなった。
もちろん、ニュースになりその後は利用者が減り閑古鳥が鳴く状態になり潰れた。
レジオネラ菌で人が死ぬ場合があるのにお湯換え、塩素注入を怠っていたなんて言語道断。
近所の温泉がレジオネラ症で死者を出したために潰れたという経験談です。
今回の件も発覚していないだけで、死者が出ていてもおかしくありません。
潰れても文句が言えないような状況です。
それでも平気な顔をして営業を続けているのは、納得できないですね。
温浴業界に従事していますが、これはありえない。日常の清掃もどうしていたのでしょう。
客舐めてるとかそういうレベルではないと思います。
管理者全員、温浴業に携わってはいけないレベルです。
何かあってからでは遅すぎます。いつ死人が出てもおかしくない、綱渡り状態での運営です。
同じ業界の方からの意見です。
やはり、この方もあり得ないと言っていますね。
ホテルや旅館にとって、温泉の管理はかなり神経を使う部分です。
こんな杜撰な管理をしているのは、ほんの一握りでしょう。
それでもこういった事件が起こることで、全国の温泉の管理体制が疑われてしまうのは悔しいですね。
今回の事件を起こした管理者全員、この業界に携われないような処分を下してほしいです。
Googleの口コミを見てみました。
8月上旬にお世話になりました。入った瞬間から歴史を感じ、さすが創業150年⭐️
温泉も素晴らしかったです。大浴場は広くて、扉を開けるとすぐ硫黄の匂いがします。
上がってからも身体がずっとぽかぽかしてました。福岡市内から近いこの場所にこんな良い温泉があるなんて!早くから来たらよかった〜😊
Googleはほとんどの口コミが高評価でした。
正直、レジオネラ菌が多いかどうかは見た目では分かりません。
こうやって高評価をつけてくれた人達、全員を裏切ったことになります。
大丸別荘の社長は現在だんまりを決め込んでいますが、しっかり表に出て、しっかりと説明しないといけないと思います。
それができないのなら、お客さんを軽く見ている「悪質な旅館」として広まるだけですね。
大丸別荘社長ついに記者会見!呆れた内容とは?
事件発覚後、沈黙を守っていたいた大丸別荘ですが、2023年2月28日ついに社長が記者会見を開きました。
内容を詳しく見ていきます。
大丸別荘・山田真社長: レジオネラ菌があまり大した菌じゃないという認識がひとつと。
大丸別荘・山田真社長: 塩素注入しなかったのは、塩素の臭いが自分の体質にあわず嫌いだったという、身勝手な理由でございました。
大丸別荘の山田社長はレジオネラ菌を「大した菌ではない」と認識していたとのこと。
これは温泉付き旅館を経営する者として資質を疑われる様な発言ですね。
上でも説明していますが、レジオネラ菌は年間50人以上の死者を出している危険な菌です。
温泉施設を経営するなら必須の知識と言っても過言ではありません。
さらに、「塩素の臭いが嫌いで塩素注入しなかった」という発言。
これも本当に耳を疑いますね。
多くの人が塩素の臭いなど好きなわけありません。
私もホテルで働いていた時、お客様のアンケートで「温泉の塩素の臭いが不快だった」と書かれたことがありました。
それでも、お客様の健康のためにも塩素注入をやめるわけにはいきません。
多くの旅館がそういう葛藤を持ちながら塩素注入をやっています。
客の健康を無視し、「この温泉は塩素の臭いがしなくていいね」という評価だけを得ていたのなら、許しがたいことですね。
さらに、一部の従業員から法令違反を指摘されていたそうですが、無視していたとのこと。
パワハラ体質も疑われますね。
今回の件が落ち着いたら、社長を退任するとのことでしたが、しっかり旅館業のことを理解している人間にバトンタッチし、大丸別荘が生まれ変わることを願います。
また新たな情報が入り次第追記・更新していきます。